先日、無花果と書かれたダンボール箱が送られてきた。
差出人は地元の古い友人からだった。

開けてみると長いこと彼に貸していた物達が入っていた。
存在も忘れていただけに懐かしかったけど
いまさら手元に戻ってきたところでちょっと困ってしまった。
正直なところ、僕にはもう必要がない。

彼にとっても必要が無くなったのだろうか。
放置せずに使用していた形跡は残っている。
僕はというと、むしろ箱に興味をひかれた。
無花果という字の読み方がわからない。

何か宗教的なカッコイイ雰囲気を感じたので調べた結果、
果物の『いちじく』の漢字書きだとわかった。
いちじくは花を咲かせず実を付けるので
「無花果」と書くようになったという通説である。

しかし実際には外から見えないだけで花はあるとのこと。
つまり、自分の内側に向けて花を咲かせているらしい。
僕は大変興味を持った。
さらに、みんなが食べているあの部分が花だという。
花を食べるという果物は、あまり無いように思う。

いちじくは自分の体内に、誰からも見えない花を咲かせている。
僕らは、それと知らずに、いちじくの花を食べている。
いちじくの花を摘み取り、食べている。

彼が今になって、わざわざ返してきた事には
何か意味があったのだろうか。